借家闘争の日記

ー田舎暮らしの意外な落とし穴ー

内容:

  つくば市春日・外人ゲットー

 立ち退き要請ビラ、入る

 犯人は相続税?

 田舎の役所は役に立たない 

 インターネットは役に立つ

 東京2500円・土浦400円

 弁護士さんの励ましに感謝

 家賃を供託する

 経済学者に反論する

 第一回調停

 農家は農薬好きか?

 確信犯の不動産屋 (敷金返却についてのトラブル)

 お便りありがとう

 

 

つくば市春日・外人ゲットー

私は筑波大学近くのとある借家に友達と二人で暮らしていた。そこは、もと農地だった場所に平屋が20件ばかり建っている通称“外人ゲットー”といわれる住宅地なのであった。

なぜ、外人ゲットーか。もちろん住人に外人が多いからである。たとえば私の前にこの家に住んでいたのはスウェーデン人だし、その時となりはたけしの“そこがおかしい日本人”かなんかに出ているドイツ人だった。既に引っ越してしまった人も含めると私がここでこの2年間に隣人として接したのは、ドイツ人、ブルガリア人、ロシア人、スペイン人、スリランカ系カナダ人、普通のカナダ人、日本語のうまいフランス人、日本語のぜんぜんできないアメリカ人、エジプト人の家族などなど(知っているだけでも)実に多彩であった。多分この広々とした土地に平屋というのが外人むきなんだろう。アメリカ人は裏庭を耕してコーンとグリンペッパーを作っていたし、ブルガリア人はしょっちゅうパーティーをしていた。フランス人は猫を飼っているし、ドイツ人は天気のいい日に良くひなたぼっこをしていたものだ。私たち自身は、なす、きゅうり、かぼちゃ、春菊、ささげなどなど季節ごとの野菜を栽培し、自給自足の生活(たまには他の住人と物物交換をすることもあった。カナダ人の住んでいた家などは、キウイの木にのみ込まれそうになっていて、この木はたわわに実をつけたていたものだ)をしていた。

― 何が言いたいかというと、私はこの“外人ゲットー”をこよなく愛していた、ということなのです。私にとって外人ゲットー”こそ筑波の桃源郷(誉めすぎか)だったのだ。

ところが、不幸は突然やってきた。

 

立ち退き要請ビラ入る

1999年1月13日。私が帰省先から筑波にもどってきたときに、それは郵便受けのなかに、ほかのどうでもいいようなダイレクトメールといっしょに入っていた。差出人は不動産屋。

この家は老朽化したので、6月末日までに立ち退いてください。新しい部屋探しのお手伝いはいたします。ついては立ち退きに同意する用紙に署名をして送ってください。(A住販)

との事。これぞ晴天の霹靂。ちょっと待ってよ。大体、署名をして送れというのに返信用の切手がないとは何事だ!…じゃなくて、いったいこれ、どういうこと?大体、この家のどこが老朽化してるって言うんだ、いうてみい!

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犯人は相続税?

そもそも、ものには頼み方ってもんがあるだろう、と思う私は古いんですかね。立ち退き要請をするなら、家主が挨拶に来いっての。不動産屋のわら半紙一枚ってのはふざけてますよ。で、家主に聞きにいったわけですよ。そしたら、“相続税対策で。借金作っておかねば、土地残らねから。いま、金利も安いし。とにかく年寄りで、さきがネから”。と、年寄りを理由に泣き落とし作戦。しかし、去年は申告もれが見つかって200万ほど取られたとか、駐車場になってるところは農地とは認められないといわれて(あたりまえだよ)追徴されたとか、とにかく、延々と金の話ばかり。このバーさんほんとーにお金のことしか頭にないのね、と思いましたよ。ところで、つくばは25年ほど前に農地に忽然とできた町なのでこの手の拝金主義の土地成り金が多い土地柄です。なにしろ当時1000円に過ぎなかった坪単価が都市計画で100倍の10万円になったわけだから。それにしても、私は学生、卒業まであと一年、いまさら引っ越しはきつい(経済的に)。それにせっかくエアコンや給湯機もつけたのに。。。(家主の許可ももらった。突然年寄りになるわけはないんだから、こんな計画があるならもっと早く教えてくれればよかったんだ)。    

田舎の役所は(ほんと〜に)役に立たない

次に私がしたのは、役所の相談窓口での電話相談。各自治体には大概電話の相談窓口があって、専門の相談員が相談に乗ってくれる。ここなら、この理不尽な状況を打開する秘策を授けてもらえるかも知れない。

ちょっと細かい話になるけど、この家の契約書は契約開始期間だけで、終了期間が明記されていない。こういう契約の場合、家主は6ヶ月前に申しでれば何時でも解約できる事になっている(借家法27条、旧借家法3条)。しかし、解約申し入れには正当事由が必要とされ、これがなければ申し入れから6ヶ月たっても立ち退く必要はない。不動産屋が6月の終わり、といってきた所を見ると、一応借家法は読んでいるのでしょう(ビラは1月1日に入れていったのでしょうが、、、そんなの入ってなかったよーんといわれたらどーするつもりだったのかしら?)。ここで問題なのは、老朽化や、相続税対策が正当事由に当たるかどうか、というポイントなわけです。で、役所に聞いてみたところ、

役所の解答

茨城県消費生活センター (029−225−6445)

建ってから10年ぐらいたったら老朽化してるといえるんじゃないですか。

茨城県県民相談センター (029−228−1515)

立ち退きに理由なんか要りませんよ。引越し費用の請求? できません(きっぱり)。現状回復はあなたの責任ですから。

常識的に考えられるように、相続税対策などというのは、立ち退きに正当事由には当たらない。建物が、朽廃滅失した場合は賃貸借契約は解消になるけれど、ただ古くなったというのと朽廃滅失とは通常同じではなく、本当に住んだら危険!(消防署命令などが一つの参考となる)というのでなければ老朽化だけで正当事由とする事はできい、というのが正解である。

答が間違っているのは、県も市も同じ。だが、消費生活センターの人はまだ、一生懸命調べようとしてくれる態度に好感が持てました。県民相談センターの窓口はひどい。どうどうとうそつくだけでなく、こちらが怒られてしまいました。相談窓口に電話をかける人はほんとに困っているのに。こんなのは、ただ役に立たない以上の大迷惑だって。

ちなみに東京都は不動産専門の相談窓口があり、毎日先着順で弁護士さんによる法律相談が受けられる。(しかも都内に3個所もある)。茨城県にも法律相談サービスはあるけど、月2回、それも常磐線にのって水戸まで行かなくてはならない(遠足)。

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インターネットは(まあまあ)役に立つ

インターネットは田舎の役人なんかよりよっぽど役に立ちました。おかげで、私のケースでは正当事由は(多分)成立せず、立ち退きに応じる必要はない事、応じるとすれば、近所に引っ越す、引越料くらいは請求できる事、などが即座にわかりました。ここに参考にさせて頂いたホームページを紹介いたします。

予防法務ジャーナルそよ風 ・・ 最も的確な情報が手にはいりました。しかも読みやすい。一押しです。でも、この代表をしている弁護士さんの事務所の時間相談(有料)に電話をかけると、必ず「忙しい」の一言で秘書と思しきおばさんにことわられます。

東京弁護士会ホームページ ・・ 東京弁護士会のQ&A集です。

 

東京2500円土浦400円

まさか、裁判所システムって地方によって違うんじゃ…

いろいろ調べたところでは、要は立ち退きに応じる必要はないわけだから、応じないよ、といって居座っておけばいいようなものなのだけれど、休日早朝に不動産屋がたずねてくるなど、脅迫強要とは言わないまでも、それに近い不快な追い出しを図られるのは困る。それに、法律って、自分だけ知っていても、(民事の場合)相手が知らなければ何の意味もないわけで、いろいろ調べた成果を、妙に威圧的で堂々としている家主や不動産屋と分かち合いたい、って気分になってきた。そこで、某月某日、調停を申し立てるべく、土浦簡易裁判所に電話をしてみました。

電話口のおじさん:そんなことで調停せんでもお、新しくたったマンションに優先的にいれてもらえばいいでねえの。(それまではどーしろっていうのよ)調停は時間がかかるよ。あんた学生さんでしょお、そんなことしてるひまあんの(う)。とにかく、こういう件は普通は家主が申したてるのよ。とにかくショーカショーとってきてよ。

私:は?電話口のおじさん:ショーカショー

私:昇華証?(消化証?)ですか?

電話口のおじさん:いや、建物のショウカ、ショウショウのショウ

私: ???

おじさんのいっているのは建物評価証であった。あまりの土地言葉で本当にわからなかった。とこ ろで、建物の評価証は本人(この場合家主)以外の個人では取れない(司法書士さんや弁護士さんであればとれるらしいが)。では、申し立てはできないってことか?…土浦簡易裁判所があんまり親切でなかったので、東京簡易裁判所に聞いてみた。そうしたら、とにかく、最低の印紙で申し立てれば、裁判所の方から証明書が出るので、それを持っていけば評価証は取れるというような事を教えてくれた。私は実家が東京なので、帰ったついでに東京簡易裁判所によって申し立て用紙をもらってくる事にした。調停は、相手方の住所があるところ(この場合土浦)でしかできないが、申し立ては郵送でもできるので、今日、ここから送ったらいいといってくれた。私はとりあえず、書き方を教えてもらって、書きあがった書類を土浦簡易裁判所まで持参する事にした。

東京と土浦とでは裁判所の雰囲気はまったく違う。ちょうど東京駅と土浦駅がまったく違うのと同じように。規模が違うだけではない。機能だって違うのだ。東京は相談員がいる専門のコーナーがあって、明るい感じ。法律は身近なものです、裁判所を利用するのは、国民の権利ですよーという敷居の低さが感じられる。一方土浦は・・・・・・(自主規制)

ひとつおっかしいのは、土浦と東京では申し立ての際に必要となる切手(予納郵便切手という)代がぜんぜん違う事。

東京は、 500円 × 4 + 80円 × 4 + 20円 × 4 + 10円 × 10 = 2500円

土浦は 80円×5枚の400円

この違いは何?

茨城県の皆さん。切手代が安いのはラッキーですよ!

ところで、評価証は申し立てをすれば、裁判所から取り寄せてもらえる、(少なくとも土浦は)という事が判明した。電話番のおやじがいいかげんだっただけらしい。マ、それも困るけど)。

これは余談だけど、つくばには弁護士事務所がほっとんどない。茨城県南版のタウンページを開くと、弁護士事務所の欄は、ペンキ屋と弁当屋の間にわずかに半行、つくばに限って言えば5件もないのだ。ちなみに私の実家の品川に配達されてくるタウンページには、何ページかにわたって弁護士事務所の広告がのっている。広告を見ているだけで、今カードローンに苦しむ人が多いんだな、って世相までわかるほど。田舎暮らしにあこがれている方、東京から一時間だなんて甘く見てはいけません。東京と田舎は別な国だといってもいいくらいですよ(言葉だって通じないし)。

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弁護士さんの励ましに感謝

土浦の電話のおじさんに説得されて、調停って、借家人の方からはできないのか、、、と落ち込んで家に帰ったら、電話の留守録に弁護士さんからのメッセージが入っていた。役所の説明は間違っている、家主の要求もとんでもない、評価証くらいとってあげてもいいよ、という内容。実は、土浦に問い合わせて電話のおじさんに説得されてやっぱ調停もだめかなーと思っていたときに、インターネットの法律相談を利用してみたんですが、この弁護士さんはそのメールをみて、即日電話で答えてくれたんです。つまり、一面識も無い私のために、まったくのボランティアで電話をしてくださったわけです。法的知識はもちろんですが、こういう事態に陥ったときもっともうれしいのは、励ましなのです。インターネット上で、無料の法律相談をボランティア(あるいはそれに近い安値)で開設しているページはいくつかありますが、回答に時間がかかって、その上回答が(申し訳ありませんが)あまり、役に立たないもが大半です。

電話をくれた弁護士さんのページに行くと、自己紹介で、「偽善者」と書いていらっしゃいます。いわく「大の大人が建前をいえなくてどうする」と。これ感動してしまいました。建前を堂々と通すのは思ったより困難なことですよね。

 

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家賃を供託する

3月末、大家に家賃の受け取りを拒否された。ラッキーなんて思ってはいけない。たとえ拒否したのが大家の方であっても、支払わなければ、立ち退かされる(考えてみれば理不尽なシステム)。で、借家人はどうしたらよいか。「法務局に家賃の供託」、という手続きをとる。私も早速供託の手続きをとることにした。供託に必要なのは、家賃、認め印、と切手のはってある封筒。封筒は供託の複写の一枚を家主サイドに送るのに必要で、80円がはってあるか、あるいは郵便書簡でもかまわない(これなら60円ですむ)。

法務局は各都道府県ごとにいくつかある。が、供託ができるのはだいたい支局だけで、つまり、数はあんまりない。案の定、筑波にはなくて、土浦の法務局まででむくことになった。土浦の法務局は狭ーい道をくねくね曲った、とんでもなく分かり難いところにある。手続きそのものはそう面倒でもないが、行くのが大変。おまけに、法務局の窓口ではお金の支払いはできず、土浦市街にある常陽銀行の土浦支店まで出向いて支払わなければならない(振り込みはできない)。これがまた、法務局からも遠い。しかも当然平日のoffice time に行かなければならない。

仕組みがあるのはいい。しかし現実問題として使えなければ話にならない。毎月の家賃の供託など、よっぽどヒマがなければできる技ではない。こんなの必要な情報をインターネットで入力し、あとは振り込で何が悪いのだ、と思う。政府も景気対策とかで、無駄金まいたり、ダム作ったりする暇があったら、役所の仕事のオンライン化でもしたらいいのだ(景気対策費が土建屋ばっかり養うのは何故? やっぱニューディール政策(笑)の亡霊かな)。

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経済学者に反論する

  借家法の歴史は古い。制定されたのは大正10年、当時あまりにも貸し主の立場が強くて、突然立ち退きを迫られて行き場がなくなる借家人が続出したことの対策としてであった。しかし、この法律の下では、借家の場合、家主が解約だといえば6ヶ月後には契約は終了することになっており、実質的な借家人の保護にはなっていなかった。その後昭和16年に改正され、正当事由がなければ契約更新をこばむこともできないとされるようになるが、これは戦地にゆく兵隊さんが何年後か戦地にいっている間、家族がもとの場所に住んでいられるように、との配慮からであったという(ホントに古い)。だから現在の状況にあわせて変更せよ、という議論が登場するのはむしろ当然の流れではある。

借地借家法でいう正当事由は、極めて厳しいもので単独ではほとんど成立しないと言われている。日本が建築ラッシュにわいていたバブル時代、相当額の立退き料と合わせて正当事由を成立させる判例が相次ぎ、高額の立退き料が世間を驚かせることになる。平成4年から施行されている新借家法では、期限付きの賃貸借契約が結べるようになったがいまだ不十分であるという声も高い。だからこの“正当事由が必要”というのを天下の悪法と思っている人は少なくない。少なくとも経済学者の多くは以下のような議論を展開する。

曰く、一度貸したらいつになったら返してもらえるかわからないような法体系になっていては恐くて貸せない。すなわちマーケットに出てくる物件の数は自然少なくなる。これが、物件不足につながり、結果として貸し手市場、つまり借家人の不利となる、というのである(つまり潜在的な借家人を排除している、というわけだ)。見よ!(経済学者はトクイになって続ける)日本の持ち家率は諸外国に比べて高い。特に家族もちに限っては借家住まいを望むものは少ない!。

しかし、である。以上の議論は、現状で借家は少しも不足しておらず特に首都圏では圧倒的な借り手市場になっている、という現実を全く反映していない。つまり、この議論自身、古いんである。借家はだぶついている、その上でみんな持ち家を望んでいるのだ(と思う)。

持ち家率が高い理由の一つには、持ち家政策があるだろう。つまり、家を取得すれば税制上の優遇措置が受けられるので、買うのが結構お得なんである。いまでも、不動産が動けば景気が好くなると考えている人はいっぱいいるから、景気のてこ入れに持ち家政策は使われる。その結果である。

もう一つは、やっぱり借家ではいつ追い出されるかわからないという不安があるからだと思う。今回のことでよく分かったが、借家人はとにかくそこに住んで、生活をしているわけであるから、脅迫強要に弱い。また、家主は家賃を受け取らないかもしれないし、メインテナンスをしないかもしれない(隣のうちはもう壊すからといってお風呂を直してもらえなかった。だが、つくばには風呂屋は一件もない)。こうした嫌がらせ一つ一つと戦ってゆくのはとてつもなく消耗する作業なのである。また、法的な手続きは暇がない人にはできないので、実際には法律があれなにがあれ、理不尽に追い出される確率の方がずーっと高い。学生のうちはなんだかんだいって傷は小さくてすむ。でも、もし、年をとって住み慣れた部屋の立ち退きを求められたら。。。持ち家を志向するのは当然である、いや持ち家でなければ住めない、と考える人がいてもちっとも不思議ではない。確かにバブル期の立退き料は驚きに値する。しかし、それはほとんど商売をしていた場合の話であって、これと通常の住居に使っていた者とを同じ次元で議論することなどできないのである。

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一回調停

4月15日、第一回調停が行われた。調停員は2人。一人は弁護士さんで、もう一人は民間の有識者である。調停員さんは、(土浦にもかかわらず)常識ある、本当にちゃんとした人でだった。「申し立て書を読みましたが、この立ち退き要求は通りません。卒業までまってあげたらいかがですか」と家主にいってくれ、ほとんど2分で終わりそうになった。調停の内容は、契約は解消。ただし、借家人(私)は卒業するまで、居住できるものとし、損害賠償として、月々家賃相当を支払う、という両方のメンツをたてたものであった。ところが家主の方としてはここで合意してしまっては、予定通りの建替えができなくなるので、とにかく引き伸ばしを要求。調停は第2回目に持ち越されることとなった。この爺さん、多分なにも決定権がないのだろう。とにかくYESというな、と不動産屋と婆さん(しっかりもの。強欲)にいいふくめられてきたものと思う。家賃の供託が大変だといったら、調停員の方が、受け取ってあげたらいかがですか?と交渉してくれた。そうしたら、いきなり椅子をけって“おらは金なんがいらねんだー”と大騒ぎして一時中断。気の毒なほどこっけいであった。開発とともににわか成り金にさえならなければ、気のいい百姓で一生すごせたものを、と思う。

 

農家は農薬好きか?

話は変わるが、この家主のことで、前から困っていることの一つに、私が借りている家のまわりに農薬をまく、ということがある。春になって、たんぽぽ、すみれ、いぬふぐりなんかが美しく咲き競うころになると、危ない。背中に除草剤を背負い、マスクをした本格的な装備でやってくる。で、去っていったあとは、鮮やかな緑が見るも無残な立ち枯れの茶色と化している。外人ゲットー沈黙の春。

ここの飲料水は井戸水であるがお構いなしである。何度やめてくれといっても聞かない。スリランカ系カナダ人のジャイアンタに言わせると、「趣味なんだよ」。

農家は農薬薬害の、一番の被害者であるといわれている。暴露量(リスクの専門用語。こういうことに興味のあるひとはリスク理論入門も見てね)は消費者よりむしろ高い。たとえ、自分の食べる分には農薬を使っていなくても、である。それにしてもこの老人は高いリスクをおかしてまで、なぜ必要のない農薬を散布するのだろうか。すくなくともリスクに対する認知レベルが低いことはたしかのようだ。農家みんなではないとは思いますが、こういう人たちが作ったものを我々は食べているのですよ、みなさん!!! やはり減農薬運動は消費者がイニシアチブをとるしかないのではないか、という気がしている昨今です。

除草剤とか除虫剤とかいうのは大概、劇薬である(たとえばこのあたりで、空中散布される松枯れ防止剤は、かつてナチスが人の殺戮に使用した毒物にメチル基をくっつけただけの燐系の神経毒薬)。どうして、大量の農薬を扱う農家に、毒物取り扱いの国家資格(のようなもの)がいらないのか不思議である。

よりよい環境を求めて田舎暮らしにあこがれているあなた。見えない薬害リスクは東京にいるよりむしろ高まるかも知れませんよ

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確信犯の不動産屋 (A住販を利用したアメリカ人の例)

最近、借家関係でやたらと増えているのは、敷金の返還をめぐるトラブルだ。畳の表替えや壁の塗り替えなど、リニューアルの費用を、現状回復費用と称して敷金から差し引こうとする大家が激増しているのである。

この件に関する裁判所判断ははっきりしていて、畳の日焼けや壁のすすけなど、普通に生活していれば当然発生するような経年変化や汚れ等は、本来家賃で補償されているはずであり、したがって家主側は退去時に新たに請求することはできない、ということになっている。つまり、ちゃんと家賃を払っていて、かつ故意または過失によって焼けこげなんかをつくらない限りは、出るときに畳替えの費用などを請求される筋合いはない(敷引きがあらかじめ定められている場合はこれが回復費用にあてられる)。

さて、外人ゲットーに住んでいたアメリカ人はA住販売の斡旋により、あるアパートに移る事になった(ちなみに不動産屋方の都合による引越しなのに紹介料は一円もまけてくれなかったそうな)。契約書には敷引きのことは一切書いていないのだが、契約書を取り交わした後に、新しいアパートの鍵といっしょにわたされた“入居のしおり”なるものに

“畳の表替えまたは裏返し、壁の塗りかえ、および鍵の付け替えは、入居の長短に関わらず、借家人の負担とする”

と明記してある。これらはもともと家主が負担すべき内容のものばかり。そも、こういった、非常に大きな費用(ワタクシの感覚では)のともなう重大な合意事項を、契約書にではなく、“しおり”なんぞにのせるというのは不誠実である。“しおり”にのせる内容でふわさしいのは“ごみはきられた日にステーションに出しましょう”とか、“22時以降のカラオケはご遠慮ください”とか、その程度のことであるべきだ。

日本の事情を良く知らないアメリカ人にしてみれば、これが日本の習慣だ!といわれてしまえばさからいようもないわけで、不動産屋にしてみればチョロイ相手ではある。不動産屋は宅建の資格をもってやっているのだから、この程度の法知識がないとはいわせない。つまり、法的には通らないと百も承知でやっているわで、手強い。

余談だが、アメリカにはこういった習慣はまったくない。デポジットとして、契約時に一ヶ月分の家賃を前渡しするが、これは何事もなければ、最後の月の家賃と相殺される。また、町ごとに “Housing Authority” なる不動産専用の簡易裁判所みたいな施設があり、問題があれば簡単に法的手段に訴えることができる。アメリカの司法制度は非常に身近であるがために、日本人の間ではかえって不評であるが、こういった制度の充実により、どれだけ多くの人が泣き寝入りしなくてすんでいるか、また、どれだけ市場の成熟に役立っているか、という面をもっと見てほしいと思のである。

さて、アメリカ人のようなケースは裁判にすれば敷金を取り返すことは可能であるとは思う。しかし、多くの日本人同様、彼も日本で法的手段に訴えようとはしないかもしれない。大家にしてみれば、仮に訴えられて負けたとしても、もともと当然返すべき敷金を返却しなければならなくなるだけの事、うまくして訴えられなければ丸儲けである。したがって、とりあえず、敷金はかえしません!といっておいても、なんら損はない、というか、まず確実に儲かるだろう。つまり良心的な業者や大家さんは市場では常に不利となり、淘汰されてしまう可能性があるわけで、これは本当に困る。争いごとを好まないのは日本人によく見られる特徴ではありますが、自分が損をするだけでなく、市場を通して他人の迷惑、ということもよく頭に入れて行動たいものです。

さて、敷金関連HPを以下にご紹介いたします。

敷金返還請求訴訟 …・ご本人で闘われた調停と裁判の記録。怒りが伝わってきますね。

こんな苦情相談が増えています …・ 消費者情報プラザのHP

『敷引き5割のはずが …・ひょうご法律のひろば HP

現状回復トラブル記事 同じページでここも参考になりますよ

借家を明け渡すとき敷金を返してもらえますか

敷金返還問題 ・・まだ未完成のようです

家主が借家の敷金を返還してくれません ・… 法律相談

 

お便りありがとう

さてこのページにもたまーにお便りをいただくのですが、結構借家で怒ってる人は多いのですね。(ま、字が間違ってますよとかいうご指摘のメールも多いんだけどね。)それにしても、つくば在の方からのお便りは身につまされるものがあるので少しだけご紹介しませう。寮から出ようとしている1,2年生諸君、また来年筑波大学をめざしている受験生諸君、参考にしてください。

 

「。。。ところで、立ち退きのトラブルのページを見ました。私も1997年までつくばにいました。

勇気をもって行動なされていることに非常に共感を覚えますが、私はただ1点心配なことがあります。よく「話せばわかる」といいますが、世の中には話しても話しても決してわからない人もいます。私はつくばでそれを実感しました。特に茨城県人にはそういう人が多いです。話をしても全くこちらの言い分がとおらないので、私も非常に憤慨した覚えがあります。わざとわからないふりをされていたのかもしれません。でも本当に貴方の話を分かっていないのだったら、貴方のしていることは家主にとっては不倶戴天の敵、恩を仇で返す居候と思われるでしょう。

私は家主と喧嘩して恩を仇で返すのか!とどなられました。

部屋を貸しているのが恩なのだそうです。

家賃を払っている住人との友好関係という考えではなく主従関係しか頭にありません。彼等には彼等で確立した(無知のかたまりのような)規則があり、それが例え日本の法律に反していても構わないのです。茨城県人は短気です。周りの人によく状況を説明して行動された方が良いと思います。

暴力団と言うか地元の土建屋と不動産屋はつるんでいます。で地元の土建屋はやくざです。いなかやくざです。

土浦の弁護士さんはそのへんはよくしっていると思います。友人知人にこんなことをいましているんだと相談しておくのは、いいことだと思います。

つくばは商工会議所もなく英検や簿記検定は土浦までいかなければなりません。短気な集落の寄せ集めの都市なので、意見もなにもまとまらないのだそうです。土浦はつくばとくらべればまだましなほうです。水戸よりもましだと思います。お世話になった人とはいまでも交際がありますが、とにかくいろいろあって私は茨城県人は大嫌いです。影ながら応援していますが、くれぐれも自分の身には気をつけてくださいね。」

 

含蓄のあるアドバイスですね ^^; でも彼の言っていることは誇張でもなんでもありません。つくばにきたら自分の身は自分で守るしかありません。

ではもう一件。

「初めましてこんにちは。

大変おもしろい内容だったのでおもわず感想を書こうとしています。実は私も筑波大の学生なので直面した問題がどういったものでどのような理不尽さが賃屋世界で巻き起こっているのか身にしみる思いです。やはり私も大家とのトラブルが原因で今年は2回引っ越しています。賃貸関係の事って分からないので不動産屋にまかせきりにするとろくなことないですよ。変なこと多すぎます。大体礼金ってなんですかね?借りて家賃払うのになんでお礼しなくちゃいかんのかい!

敷金も皆ほとんど返してくれないのが現状で友だちからよく苦情をききます。ほんと、学生だからってつくば周辺の不動産屋はなめてるんだよな。」

この方の体験談はすごいです。でも、まだ筑波におられるようなので、差し障りがかるといけないので割愛しました。残念。でも学生だからなめられてるんだか、そもそも田舎は、あるがままの自然体で人に迷惑なのかは悩むところですね。

私は東京生まれの東京育ちなので田舎暮らしにちょっとあこがれていたところがありました(しかも両親とも東京出身なので、ほんとうに田舎がない)。が、つくばに暮らして、3年。現在では田舎暮らしおそるべし、と思っています。もっともつくばの中途半端な開発かげんがいけないのかもしれません。開発の魔の手が及んでいない、もっと本格的な田舎にいけば、品格のないにわか成金に会うわなくてすむかもしれないですね。

 

さてこのHPの更は今回で終了します。読んでくれた皆さん、応援してくれた方々、どうもありがとう。

 

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最終更新日 : 更新日 1999 年 10月26日

 

*2003年現在、この人、どうなっているかな? 最近では、数年前に相続税逃れに土地担保で大金を借りたものの、土地の評価額が下がりつづけて銀行に追加担保をとられ、ついには家屋敷まで担保に取られる人がいるみたいだから。こういう意味では資産デフレ万歳と思う次第なのである。

 

ところで瀬尾は無事筑波大学を卒業して、現在青山学院大学の助教授をやってます。筑波でお世話になったみなさんありがとうございました。

 

コメント:20043

 

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*2011年、4月“さもありなん”なニュース発見

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つくば市、福島からの転入者に放射能検査要求(読売新聞 - 0419)

 

茨城県つくば市が、東京電力福島第一原発の事故で福島県から避難して転入する人たちに、放射能汚染の有無を確認する検査を受けた証明書の提示を求めていたことが18日、わかった。

 

つくば市によると、市民課長名で3月17日、福島からの転入者にスクリーニング検査を求めることに決め、担当する窓口へ通知した。原発事故が起きてから、つくば市には福島県いわき市などからの住民が避難している。

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無知はpublic bads (怒)

 

Last update 2011/04/26

 

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