日本語は正しく使いましょう
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私をよく知る人なら、「おまえには言われたくない」と思うでしょう。私はなんでも自分のことは棚に上げるようなヤツなんです –
日本語が乱れている。というのはいつの時代もいわれることで、言葉はどんどん変わってゆく。間違った使われかたも、定着してしまえば、正しい言葉となる。だからなにが正しいとか綺麗だとか言うのはとても難しい。以下は私の全く個人的な感覚のダワゴトだと思っていただくのがよいかと思う。
私が知らないあいだにいつのまにか市民権を得てしまった言葉に
「とんでもございません」
がある。私が子供（注：私は、故あって「子ども」と書くのがきらいである）の頃は、これは間違いとされた。とんでもないの「ない」は「せつない」とか「はかない」とかの「ない」と同じで否定の「ない」ではない。だから「せつない」を「せつございません」とは言えないように、「とんでもない」を丁寧にしても「とんでもございません」にはならなくて、「とんでもないことでございます」というのが正しい、いや、正しかった。ところが、いま辞書によっては、「とんでもございません−とんでもない、の丁寧語」、「とんでもないことでございます-とんでもございませんの老人語」などと書いてある。形勢不利。とりあえず、自分では使わないが、特に小言はいわないことにしている。
やはり小言は言わないけれど、格段に不愉快なのは、
「頂いてください」。
食べ物を進められるときに使われたりして憮然とすることがある。「頂く」はただの丁寧語ではなく謙譲語、すなわち与える方が、受け取るほうより上であることを意味する。だから、自分が使うならいいが、相手に「どうぞ頂いてください」などと言うと大変失礼になる。「どうぞ召し上がってください」と言うべきであろう。
「頂く」をただの丁寧言葉だと思っている輩が多いのは、看護婦とネット関連産業のQA窓口嬢だ。看護婦が患者に対して、「はい、いただきなさ〜い」などというのは普通の光景である。でも食事については「神様から頂く」あるいは「食物となってしまった元生き物の命を頂く」ものだと解釈すれば、なんとか理解できないこともない。しかし、ネット銀行の担当者から、「メール送りましたけど、頂きましたか？」などと言われると、口座を解約しようかと思う。いくら顔が見えないからって、こんなのに顧客の対応をさせていいと思うなよ、ソ○○銀行！（←窓口の言葉は悪いが、便利。おすすめである）。
「頂く」のほかにネット業界の電話番が必ず、といっていいほど使うのは、「アイコンおでになってらっしゃいますか」という表現。いくら相手の窓の上にあるからといって、アイコンに敬語を使う必要などない。これはたまらないのだが、ソフトの不具合を聞いている最中に相手の不具合を指摘すると訳がわからなくなるので、たえる。でも、「電源はあがってらっしゃいますか」、「Windowsはお見えになってますか」「アイコンおでになってらっしゃいますか」と波状攻撃。学生時代に日立のQAセンターでバイトをしていたことがあるので知っているのだが、窓口にいるパソコン専用要員は、殆どが派遣であり、専門についてのトレーニングはされていても、口のききかたなど誰からも習わない。彼らは自分の言葉が間違っているとは夢にも思わないので、今後も直る見込みはないだろう。そのうちこういう言葉遣いも市民権を得るに違いない。
ところで、私は、よく、変な言葉として上げられる「よろしかったでしょうか」というコンビニ言葉（？）が嫌いではない。自分では使わないが、別にイヤな感じはしない。なぜ過去形なのだ、といわれるとよくわからないが、日本語はもともと、「あ、来た！来た！」とこれからホームに入ろうとしている電車に過去形とも完了ともつかない言葉をつかったり、「焼けたかい？」「ああ、焼けてるよ」（黄金餅：火葬場の前の会話）と言ったり、「海が見えた。海が見える。」（放浪記：林芙美子）と言ってみたり、時制にはいいかげん（？）な言語のように思う。
2003/08/20
笑える外来語
今日の予算委員会で民主党の枝野議員、好調でしたね。年金問題で、「ちゃんとしたシュミレーション結果を示したいけれど、政府がデータを出さないから、シュミレーションができない」などとおっしゃる。歯切れはよいけれど外来語は違う。あんたが言うべきなのは、Simulationカナで書くならシミュレーション（シュミレーションではない）。こういう間違え方は、さすが元弁護士。何度も何度も繰りかえすものだから、気になってなにを主張しているのか分かりませんでしたよ。どうして日本語で「試算」と言わないのか。妙なカタカナをつかうより、まともな日本語を使ったほうがよっぽど分かりやすいのに。
2003/10/01